聖地熊野古道を行く
2004年7月にユネスコの世界遺産に登録された熊の古道
正しくは 「紀伊山地と参詣道」といわれ
霊場と参詣道、そしてそれらを取り巻く文化的景観を指すという
この、世界でも珍しい文化遺産を
絵師としてよく知られる榊原匡章さんがBMW?3と自らの脚を使って探訪
まずは伊勢路の瀧原宮から逢神坂峠までをレポートしていただこう
 熊野参詣道は伊勢神宮から瀧原宮、ツヅトラ峠へ向かう
 出発はやはり伊勢神宮。参拝を済ませたらいよいよ熊野詣でに出発。伊勢自動車道・紀伊自動車道と旅の相棒BMW・?3を走らせ、大宮・大台インターからR42を右折。5分程で瀧原宮に到着。ここは皇大神宮の別 宮にもかかわらず訪れる人は少なく静寂の中に身をおくことができる。
  鳥居くぐり、ほの暗い参道を歩くと御手洗場の表示がある、熊野古道のようなその苔むした石段を降りると清水が流れており、そこで手と口を清め、檜の素木造りの社殿に参拝。ここ瀧原宮の参道は、苔むした杉の大木が行く手を邪魔するかのように空に向かって伸びていて、そのすき間から木漏れ日が差し込む様はまさに天からの輝きのようだ。
  瀧原宮からR42を30分走ると伊勢の国と紀伊の国を分けるふたつの峠越えの入り口にさしかかる。最初は昭和初期まで生活道としても使われたツヅトラ峠(357m)JR梅ヶ谷駅手前の踏み切りを渡り表示板に沿って進めば登り口標柱がある。ツツラト峠は林道を走ることで頂上の真下まで行くことができ、横の階段を登りきると東屋と見晴らし台があり、熊野灘が見える。もう少し頑張って頂上まで登れば眺望は素晴らしく海からの風もじつに心地よい。そのまま歩いて誌子へ下ると名前の通 りつづら(九十九)折り急坂とごつごつの石畳が続く。下りた先に誌子庚申堂の三体の猿の像が、裾野ではお花畑が疲れを癒してくれる。
  もう一方の荷坂峠(241m)は、R42の道路脇に車を止め古道に入る。シダに裾野を覆われた枯葉の道を歩くと、突然電車の音が近ついてきた。JR紀伊本線の鉄橋がすぐ下を通 っていたのだ。沖美平の見晴らし台からは静かな熊野の海と裏手には国道をゆきかう車が見えた。40分足らずで引き返せるので寄り道気分で行ける。
  三浦峠(熊野道)は三浦トンネルの上にあるので、トンネルの手前を左に入り急坂を20分も歩けば峠に至るが頂上へは出ないので切通 しのあたりから引き返すのが無難かな。紀伊長島を通り過ぎ宮川発電所の裏手が登り口の始神峠(147m)は、桧の植林の中を丸太で作られた小さな橋を何個渡り登っていくと、鈴木牧之が「大洋に潮の花や朝日の出」と詠んだ紀伊の松島を頂上より眼下に望める。馬瀬に下りる道はゆるやかで若いシダが青々と茂り、川のせせらぎを遥か遠くにききながら木漏れ日の雑木林をゆっくり歩いていると、水面 が見えて来た。うっそうとした森に囲まれた宮谷池だ、古道の途中で池に遭遇するのは珍しい。広さもかなりあり、太陽が水面 を照らすとキラキラして古道の暗さに慣れた目には眩しかった。

  黒と緑のその美しさに感嘆馬越峠の花崗岩の石畳
  道の駅「海山」を過ぎるといよいよ伊勢路随一の美しさを誇る石畳で有名な馬越峠(325m)。国道沿いの登り口から早速素晴らしい石畳と対面 することになった。雨が降ったり止んだりで濡れたか花崗岩の石畳は、両側をシダの下生えと尾鷲ヒノキの美林に覆われ黒と緑の素晴らしいコントラストをみせてくれた。
  よくこんなに沢山の石をうまく敷き詰めたなと思いながら歩いていると、丁度歩幅を合わせたのかと思うほどピッタリと次に進めるのには驚きだ。また石の隙間は雨の道のごとく水が流れており、苔むした石はとても滑って怖かった。雨が日本有数のこの地方では士道なら道そのものが流されて熊の古道は残存しなかっただろう。まさに昔の人の知恵の結晶だ。
  ここは災害時地元の人たちの道となることからも、子供の夜泣き地蔵尊がある。この辺りで上りの半分ほど、まだまだ石畳の急坂が続く。頂上には石垣だけの茶屋跡があり尾鷲市内と伊勢路の難所といわれる八鬼山が望める。尾鷲側へ下りる途中のせせらぎの先の馬越公園は季節ごとのお花見が楽しめる。










  熊野古道に巨石を見つけ日を変えて逢神坂峠へ
  二木島峠から落ち葉に覆われたなだらかな通りを進み登りきると、逢神坂峠に着く。他の峠より広く大木が横たわっている、腰掛けるには丁度よい。
  私がいつものようにスタンプを押していると、夫・匡章が「あれ顔に見える?」。この日同行されていたもう一方も「顔ですね!」これ程はっきり表れるには何かがある?周りを見渡すと後方左上の石組みらしきものがある。夫がこれは「ドルメン」だろうと言う。巨石文化のころの高貴な墓。そうなると、顔に見える石は、ピラミットの前のスヒンクスのようなもの。つまり、ドルメンの守り神ではないかという話になった。
  そこから新鹿へ20分程下りると、高さが3mもありそうな丸い巨大な石が45度を思わせる傾斜で分断され、古道の右側にさも祭壇のように治まっている。
  熊野古道には古人の想いが至る所残されているようだ。逢神とは伊勢の神と熊野の神が出遭う場所という意味もあるらしく、何とも夢あるはなしである。


  レポート:榊原宏美/写 真と題字:榊原匡章
  (4×4MAGAZINE2007.3)より