匡章のエッセイ
次郎佐エ門の日々  片方の靴

手元にお金、あまり持っていないが、どうしても、安宿を探さないと、公園で野宿だが、あまり野宿はしたくない。
寝ていて身ぐるみ、強奪されないともかぎらないし。
木刀でなぐられたら、ともかぎらないし、少しのお金をおしんだらいかんしなー。
個室百五十円、段々ベット百円、ならベットにするか、でまず風呂にでも入るかと。
小さい風呂、洗い場も狭い、なのに大人三人で満員なのだ。
刺青の入ったこわもてのお兄さんが居たので風呂は後にした。
おそがけに風呂に行った、誰も入っていなかったのでやれやれと思い湯船を覗いた。
なんだ、この白い物が浮いているのは、じっと見る。
何か細かいものが浮いている、そーかー、垢が浮いているのだ、いゃー入れないなー、でも入らないと体が温まらないし。
垢まみれの体が垢まみれの風呂に入ってもっと垢まみれになってどうする。
でも入らないと思い入る、首まで浸かるが目の前は垢の塊がぷーかぷーかと浮いている。
おい垢よ、くっついてくるなよ、静かにしているからなー。
体を温めてそーっと出る、石鹸で体を洗い後は水のシャワーで流す。
つめたー、仕方ないか、早く風呂に入るべきだった。
ベットに入り寝る。
朝起きて靴を履こうとするが、靴の片方がない、なんで片方がないのか、さっぱりわからん、宿屋のおやじに聞いた。
あんた靴は枕にして寝ないと駄目だよ。
どうしてなの、早く言ってよと言うと、おやじの言うことに、常識だよこの界隈は。
盗んでいく奴がいるのさ、だから靴持って寝ていたんだ。
だけどどうして片方なんだ、仕方なく片方だけ履いて外に出た。
なんだ、おれの靴が色々の靴と一緒に俺の片方の靴が並んでいるではないか。
他にも片方の靴とか下駄がある、ちっとすみませんが。
怖そうな兄さんが、なんだいっと私を睨む、あのーこの靴、片方私のですが、なんでここにあるんですかね、おーっ売ってるんだわ。
片方だけですか、そーだわ、誰が買うんですかねー。
このお兄さん私を見てにこっと笑って、買う人かい、前に居るではないかい。
えーっ私が買うんですか、そーだわ、あんさんが買うんだわ、この片方の靴十円と書いてあるけど、十円なんですか。
俺はお前の片方の靴を盗んだのとはちがうぞー、念のためいっとくがなー、売りに来たからかったまででなー。
買わないのか、いゃー困ったなー、片方ではどうにもならんし、私が買わなかったらおたくも困るんと違うかな、おれかっ、俺はなんにも困らんぞー。
履かんでもええんやからな、履くのはお前さんだろうが。
安くしとくからどーゃ、買わんか、両方盗まんところに何かからくりがあるなー。
なんで片方の靴売っているのか判らなかったが、これでなんでかという訳がとけたけど、さーて幾らなら売ってくれるのかが問題だ。
三円しか持ってないから、何たったの三円、
あかん五円やないと売れん。
四円で買ったから、一円儲けて五円なんだわなー、五円かーそんなら四円五十銭でどうかな、駄目だ、なんで、五十銭と言うつり銭もってないから、五円だ、いやならええぞ。
そんなに突っ張らないでも、一円儲けな家に帰れん、怖いおっかー待ってるし、なんやまだお兄さんの上があるんかいなー。
そんなら五円で買いや、やれやれやった。